世界一レトロで残虐な成り代わり 後日譚
 
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「転校するの?」
「こんな微妙な時期にですか?」
「ええ、ちょっと急用が出来まして。すぐ帰ってきますよ」
「都会に行くんだよね。いいな…お土産も頼みたいんだけど良いかな?」
「良いですよ。何にしましょうか」
「良いの!?じゃあね、前話題になった映画あったでしょ。あのDVD出てると思うから、それを…」
「再生する際は私の家でしましょうか。丁度今度パーティーがありますから、そこで幾らか頂いてきます」
「あ、そうだね。考えたら私再生する機械持ってないや…」
「夏休みの終わりごろまで、それはお楽しみになりますね」
「早すぎるかもだけど、すっごく楽しみだよ!」
「では…」
「うん…これから暑くなるけど、頑張ってね」
「心配は要りませんよ。楽しみに、気長に待ってて下さい」
 
「あの…」
「安楽城さん」
「顔、大丈夫なんですか?」
「これくらい…大丈夫に決まってます。それより、あの時の事黙っててくれてありがとうございます」
「いえ。でもあの方も連れて行くんですか?」
「撫子さんですか?勿論です。あの人の協力は不可欠なのです」
 
「静可さん、お元気そうでなによりです」
「こちらこそ。…あの、悠美さん達の事は」
「…茜ちゃん達が来ても、その話題は避けて下さい」
「ですよね。ごめんなさい」
「いえ…それより、ここの生活はどうですか」
「お陰様で、本当に感謝してます。この程度で済むとは思わなくて…」
「私は何もしてませんよ。貴方のお兄さんが一番頑張ってくれたんです」
「そうですか…まさかあんなに変わるとはなあ…」
「初対面の時は私もびっくりしました」
 
「引っ越しの準備手伝って下さい」
「引っ越しって…聞いてませんよ」
「他の手続きは済ませましたから、後はここの荷物を整理するだけです」
「え…、いやそれよりも、静可は…」
「とっても元気でしたよ。手回しした甲斐があったというものです」
「手回しというより脅迫ですよねあれ」
「過ぎた事はどうでもいいのです。ほら、さっさと支度して下さい。ダンボールも十分用意しました。出発は明日なのでそのつもりで」
「明日!?何でいつも僕のいない間に事を済ませるんですか!」
「貴方が知らないだけです」
 
 
『二者択一』へ続く
 
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