飛び降り自殺with少女達-2012/03/28-
『ビルの屋上なう』
そんなつぶやきをツイートして、携帯を閉じた。
本当はビルというより、アパートの屋上なのだが。
微かに吹く風が心地よい。
このツイートが最後になる。そう考えると少し虚しくなる気もする。
今更何を考えているんだろう。
誰も見ない自己満足のTwitterだったのに。
数少ないフォロワーも、どうせ電池が切れただけとか思うんだろう。
つまり最後のツイートの後に自殺したとか、誰も考えないわけだ。
自分の死に意味が無い。そうなるとますます虚しくなる。
堂々巡りだ。もう考えるのは嫌だ。
思考の中でさえこんな思いをしなければならない。
唯一癒してくれるこの風でさえ、もうすぐ感じられなくなるのだ。
いいや、風なんてどうだっていい。早くここから飛び降りろ。
まだ生き恥を晒したいのか?
悲しむ人がいる、とでも思っているのか?
『思ってるから』
?
『望んでるからそんな事考えちゃうんでしょう?』
え、いやそんな事は…
「現実を見ましょう。今まで自分の事を思ってくれた人がいましたか?」
そうだ。そんな奴いなかった。
というか、いつの間に。
女の子だ。
少女が後方に立ってる。
『あの世は実に楽しいところですよ。ほら、早く行きましょう』
あ、と付け足すように少女は言った。
『あなたが好きな絵描きとかはできませんけれど。別にいいですよね』
足音を立てずにそこまでこれないはずだ。
つまり、私の妄想なのか。
違う。だってそこにいるんだから。これは現実だ。
無視しても良かった。だが答えないといけないという意味不明な義務感に駆られて答えた。
「それは困ります。その趣味でこれまでどれだけ救われた事か」
この言葉に対し、せせら笑って少女は答える。
『でも、評価して欲しかったんですよね。ただ一つのずっと打ち込んできた特技ですから』
『しかし誰も相手にしなかった』
物陰からぞろぞろと、別の少女が出てくる。
『その後も様々な事に挑戦しようとしましたよね。工作に音楽物書きプログラミング英語』
その少女達は交互に、読み上げるように。
『皆長続きせず』
『挫折し』
『諦めて』
『投げ出して』
『他の事に目移りして』
『また諦めて』
『同じ事を繰り返す!』
彼女たちはけらけらと笑う。
最初の少女を除いて。
『この世には希望なんてありませんよ』
『あなたが一番分かっているはずです』
ここでぴたりと合唱のような笑い声が止む。
そして畳み掛ける。
『誰も思ってくれないよ』
『誰も慰めてくれないよ』
『誰も愛してくれないよ』
『誰も楽しませてくれないよ』
『誰も許してくれないよ』
『誰も助けてくれないよ』
『誰も殺してくれないよ』
『けらけらけらけらけらけら……』
死ぬ直前まで私を貶めるのか。
『さあ、どうします?』
『下を見てみましょう。通行人が小さく見えるはずです』
『彼らとあなたは違いますよね?』
彼女に従って下を見る。
違う。奴らのように前を向いて歩くことなど出来ない。
いや、そもそも私は真っ当な人間ではないのかもしれない。
『もう答えは出ているはずですよ』
最初の少女は不気味なほど可愛らしく、笑った。
この笑顔が私の背中を押した。
『来世こそ、恵まれると良いですね』
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