クローン姉妹 2
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一卵性双生児だったから、私たちは利用されていたんだね。そうなんでしょう?
…答えなくたって分かるよ。もうすでに事実は白日の下にさらされているんだから。
でも、本当のことを、貴方の口から聴きたい。
これは私の我が儘かな。そうであるなら、許してね。
お願い、聴きたいの。この耳で。
姉さんがあそこまで暴走したわけを――…
        *
あの双子の赤ちゃんは、すくすくと育っていった。
そう、2歳までは普通に。自我が生まれるといわれる2歳までは。
ここからが、つらい実験の始まり。
゛あの計画゛にのっとって双子の彼女たちは隔離された。
双子たち隔離させたのは他でもない私。芳野翠だ。
初めこそ、同じ人間…クローンができる瞬間を見れることに、期待していた。
フィクションでしか見たことのない存在を自分の手で生み出せることを楽しみにしていた。
だけど、もう心の中で分かってた。私はそんなに馬鹿じゃない。
まったく同じ人間、外見はともかく性格・癖…なにもかも同じ生物を作り出すことなんて不可能だ。
なぜなら、一卵性双生児の双子に同じ経験をさせなければ同じ性格には成り得ない。
それに、たとえ同じ経験をさせられたとしてもそれに対して思い、考えることは人それぞれなのだから、したがって成長するベクトルも違う方向に向いてくる。
ドラえもんでもいなければ、クローンなんて作れるはずもない。
だから…
この計画にいつまでも付き合わせるわけにはいかない。
「夏樹ちゃん」
私は、話を切り出した。もっとも、交渉が通じる相手ではないことはわかっていた。
「あの人いつまで騙すつもりなの」
でも、傍観者ではいたくなかった。
「決まってんじゃん。この計画が成功するまで。といってもあとで消されるだろうけどね」
夏樹ちゃんはいつものおどけた口調で話した。
「わかってるくせに…!」
「何が?」
ドンッ!!!!!!
思わず、目の前にある机をたたいた。
もう理性的ではいられない。
「こんな…沢山の人を傷つけて!沢山の命を犠牲にして!!そこまでして続けるべき実験なんてないッ!!!」
「…」
私はすっかり息が上がっていた。まだ言ってやりたいことはあったが、身体がついていけない。運動不足だ。
しかし、感情的になっている私とは裏腹に、夏樹ちゃんの笑顔は消え失せていた。
じっとりと、私を見ていた。
あの眼で。
「なによ、せっかく好きに人体実験できる環境を用意してやったのに」
「わたしは、やりたいなんて、一度も言ってない」
「私は、あのとき見たく薬品に囲まれての実験がすきだった!!」
「『そう、残念。』」
「え」
ザザ…
ザザザ…
いつしか、囲まれていた。
銃を持った人たち。まるで軍隊を思わせるような…。
「『撃て。』」
夏樹ちゃんが腕で合図をした。
飛び切りの銃声ののち、私は意識を失った…

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