復讐を喰う者 1
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「ど…どうしたのお兄ちゃん?」
「……」
「だから…お兄ちゃん、私の質問に答えてよ!どうしてそんなものもってるの!?」
「………」
「お願い…答えてよ…!
   なんで斧なんか持って…私に近づいてくるのッ!!」
叫んでも、喚いても、兄は何も答えない。
私はただ、逃げ惑うことしかできない。………それでも、じきに終わりがやってくる。
  …ほら、行き止まりだ。
「わかんないよ、、、お兄ちゃんが、私を襲う理由が。  わかんないよお!!」
わたしはもう、涙と恐怖、不安で、ぐずぐずだった。
「全部、おまえのせいなんだよ」   「え…?」
「あのとき、おまえがあんなこと言ったからだ!!!」
何のことかは、わからなかった。 死の恐怖で判断力がにぶっていたからかもしれない。
「な、何をいってる、の…  わかんないよ!」
「とぼけるなッ! おまえは確かにいった! あれがなきゃあすべて成功してたんだ!!!
 俺の恥ずかしい話をベラベラとなあッ!!!!」
そういって、斧を振りかざす。それもケタケタ笑いながら。
私はギリギリでそれを避ける。我ながらこんな一撃をよけるなんて…
私の脳は高速回転し始める。
(あれ?周りがスローモーションで動いてる。どうして? …でも丁度いい。
 お兄ちゃんの隙が丸見えだ!あの腕と地面の間から…部屋に入れる!)

……
………
成功した。なんとか逃げ切れた。
私は部屋に入ると同時にドアを閉めた。
ドアの向こうで兄は叫びながらドアノブをガチャガチャと回し、開けようとする。
しかし、閉めてすぐ鍵をかけた。あの斧でも使わなければ開けられないはずだ。
さて、斧を使われたら私は殺される。このドアは所詮時間稼ぎ。こんな板一枚では
もつ時間はせいぜい1,2分。
このドアを破られる前に、すこしでも。
すこしでも、遠い場所へ逃げなければ……!
ガラ。 窓を開け、外へ出た。
(そういえば、ここは庭だったっけ。私あんまりこっちには降りないもんなあ…
 いや、そんなこと考えてる場合じゃない。一刻も早く逃げなきゃ!
 ! あそこにいい感じの茂みがある。隠れよう)
草木の間に隠れて、兄の言う『あのとき』のことをふり返った。
確かあれは、兄の入学式だったっけ…
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兄の付き添いで行った、入学式。
すべり止めで受けたところだったからただでさえ気が立っていた。
でも、兄と同じクラスになった彼らはとても感じがいい人たちだった。
(この人たちなら、お兄ちゃんも受験なんかにとらわれずに
 普通になってくれるかも!)
淡い期待だった。
そして新しいクラスメートたちが、こちらに近寄ってきた。
「あ、きみが春河くん?これからよろしくね」
「あなたの隣にいる女の子だれ?かわいいねー」
「あ、、どうも。私のお兄ちゃんです」
そう、社交辞令的に挨拶するものの、兄は相変わらず口を開かない。
しびれを切らした私は、ついに最終手段にでる。
相手に親近感を抱かせる奥義。『失敗談語リ』!!!
恥ずかしい話を共有し、親しみをもたせる技である。
私自身、これで失敗したことはなかったから絶対うまくいく!!……そう思っていた。
「そっそうだ!お兄ちゃんね、いまはこんなカッコつけてますけど
 実はこんな粗相しちゃったんですよ。聞きたいですかー?」
「えーなにそれ。聞きたい聞きたいー」
合コンのような雰囲気で話はもりあがっていった。
高校生に自分の話術が通用するとは思わなかった。
そして5個ほど失敗談を語り終わったころだった。
「うるさいッ!!!」
兄の怒号が響き渡った。 しばらくの間静寂がその場を支配した。
その静寂を終わらせたのも、兄だった。
「おまえら…よくもそう面白がってそんな話できるよな!人の気もしらずに……
 こーゆーやつが一番嫌いなんだ!!!!!」
兄は私を置いて帰って行った。なんとか自力で帰ることはできたが…
兄が唯一小声でで言った恐ろしい一言。そしてのちに見た高校生撲殺事件の記事。
この二つの事柄がすべてを物語っていた。
「…復讐してやる」
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「復讐したいのはこっちの方だよ」
私はそう吐き捨てた。
すべてつながった。あれは兄がやったんだ。
この考えに至ったとき、背筋がぞくりとした。
だって私の後ろに…兄が立っているんだからっ!
逃げなきゃと思っても、遅かった。
服の襟元をつかまれ、引きずられ、庭の真ん中で解放された。たぶん、私への制裁をやりやすくするためだろう。
いやにゆっくり引きずる。このとき、逃げれたかもしれない。
でも、私はもう終わっていたんだ。襟元をつかまれたその時点で。
不思議な事に、もう逃げようとは思わなかった。
(もういいよ、私つかれたの。その斧で私の首を…)
しかし、兄は優しくない。それにいまの兄は狂ってる。
そんなことすぐ分かるはずなのに。
ふと、そんな思いが私の頭をよぎった瞬間
「――――――――――!!!!」
兄は、斧で私の左腕を落とした。
「うあああああっ!痛いよう痛いよう…!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
無言なのがすごく怖かった。つい謝ってしまう。おもわず涙もこぼれてくる。
それほどまでに、痛かった。
当たり前だけど、道端で転んだ時とは比べ物にならないほど。
 にたり。
不敵に兄が笑う。
兄の顔をまともに見れたのもそれまで。出血のせいで、よく見えなくなってくる。
兄は、私の体に斧を振り下ろし続ける。


いつしか私の体は、大量の血に彩られていた。
脇腹も、顔も、首も……
なのに、意識はしっかりしてる。どうしてだろう。
私の感情を支配していたのは……憎悪、ただ一つ。
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いままでわたし、おにいちゃんのたメに…いろんなことヤッテきたノニ!ワタシはな二も、ワルイことナンテしテナイノニ……!!
オニイチャンなンテ、、、、オマエナンテエエエエエエ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
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体が、ふっとかるくなった。
まるで、空を飛んでいるように。それに気分も最高だった。
確かあのとき、××に斧で…そうか。
ここは、天国なんだ。
「いや、残念ながら天国ではないんだ」
え?
「ここは死ぬときに未練を残した者が来るところ…そう!」
「「「復讐ヘルピングサービス!!」」」
いきなり出てきた三人は、戦隊ものの決めポーズよろしくカッコよさ気なポーズを決めて見せた。
「…」
「…」
しばしの間、静けさに包まれる。
私は主人公の登場がグダグダな漫画を思いだした。
しばらくして、三人はひそひそと話し始めた(その内容は丸聞こえだが)。
「ほら、やっぱり不発ですよ。僕が言った奴の方が絶対ホームランでしたよ」
「いやいや、この小娘には所詮○○ジャーの良さなんて分かりっこありませんわ。次行きますわよ。次!」
「それ以前に、これ自体廃止する。これでは時間のロスだ」
「…」
「まあ、言いだしっぺは私ですけれど、あの娘が置いてけぼりでしてよ」
やっとこの三人がこっちを向いた。
そういえば『復讐ヘルピングサービス』とか言ったけど、何やるんだろう?
「あら、そんなことも分からないんでございますの?」
「へ?」
「少し考えてみてご覧なさい!」
「いや、考えたぐらいじゃわかんないでしょ。教えてあげたら?」
「え、あのどうしてなにもいってないのに」
「しかたないですわね!ではこの私がここの活動の趣旨を説明してさしあげますわ。
 よーく耳を傾けてお聞きなさいませー!!」
「あの、ちょっと聞いてーーー!?」
「おほほほほ!ここはあなたの復讐をお手伝いする……
 …ちょっとそこのポニーテール!ここは『サークル』でよかったのかしら?」
「あーじゃあ君はひっこんどいて。代わりに僕が説明するから。ごめんね。分かりずらかったろ?
 彼女はいっつもうるさいんだ。たまには静かにしててほしいよ」
ポニーテールの彼はため息交じりにそういった。
確かにまあうるさい感じはするかな…
「ちょ…誰か私に失礼な事考えたんじゃありませんこと…?」
うーん、何か陽気な二人だなぁ…
ひょっとしたら陽気というわけじゃないのかもしれないけど、ボキャブラリーが足りないからか上手く言い表せる言葉が見つからない。
「もーあなたはちょっとひっこんでてくださいませ!きっと私のほうが分かりやすい流れるような説明ができますわ!」
「大体君は喋るだけ喋ってあとはほったらかしという行為が目立ちすぎだ!フォローする僕の身にもなってよ!」
今もこうして口喧嘩中。マフラーを巻いた少女は事が収まるまで手出しするつもりはないようだし。
こっちとしてはよく分からないことが多すぎる。
死んだはずなのに、こうして座っているなんて…
私は恐る恐る二人に話しかけた。
「あの…」
「「何!?」」
二人は同時に振り向く。
「なんで私はここにいるんですか?」
「…」
暫くの間、お互い顔を見合わせ、ついに根負けしたのか短髪の少女が先に口を開いた。
「……仕方ありませんわね、ここはあなたに任せましたわ。せいぜい精進なさいませ!」
そういってニカッと清々しいくらいの笑顔を残して後ろに下がった。
「なんだかんだで人任せじゃん」
この状況は苦笑するしかない…

「えーと、何故ここに来たのかだっけ?」
ポニーテールの少年がやっと本題に入ってくれた。
「はい」
「その答えは死因にある」
「死因、ですか」
「またまた質問で悪いんだけど、なんで死んだか覚えてる?」
「たぶん、出血がひどくて…」
「ごめん、聞き方が悪かったね。うーん…自殺じゃないんだよね?」
「自殺…じゃないです。お兄ちゃんに…」
こうして話してる間にも、あの時の光景がずっとフラッシュバックしている。
私の身長と同じくらいの長さの斧を、この体に振り下ろす…
周りには血が飛び散り、次第に見えていた景色も赤に染まる。
「…、…」
すぐ隣にいる彼が喋っていることすら、頭に入らない。
今では元通りのこの腕も、あのおっきな、斧で切り離されるんだ。
顔に斧が下ろさレるとコロまデシカオボエテナイ…
キット、アノイチゲキデ…ワタシノ汚イ頭蓋骨や脳漿モ、眼球モ、、、ナニモカモ、グチャグチャニ。
「…?どうしたの、急に座り込んで、…」
オニイチャン、ワタシッテソンナニ汚カッタノ?
「あ、あああぁぁぁぁああああっ!!!!」
アンナニオニイチャンノタメニ、タクサンヤッテキタノニ。
「どうして!どうしていつも私のこと汚いっていうの!?役立たずって、馬鹿って、何言われても頑張ったのに!!!」
モウナニモ…ワカラナイ!!!!
「…らあら、やってく…したわね…」
「ちょ…笑って…いで…」
オニイチャンノアノ憎悪ニ染マッタ表情ヲ見ルクライナラ、ナニモミエナイホウガマシダ。
「―――――!」
「倒れてしまいましたわ…」
「どうするのさ、死ぬ寸前の事を思い出しただけでこれじゃあ、なかなか厳しいんじゃないの」
「落ち着くまで待った方が良いんじゃありませんこと?」
「いや、これは期待できるかもしれんぞ」
「交渉を続けろ。それほど憎しみがあるのなら、『種』もまた美味なはずだ」
周りから孤立したように建つ、とある一軒家。
庭は血に塗れ、一人の少女の遺体が横たわっている。
左腕は二の腕あたりから切断され、首にも切り傷がある。
両足からも血が流れていたが、そのうち止まった。
顔にも沢山の傷がある。目も潰れ、折れた歯もいくつか落ち、かつての面影は窺い知れないほどに攻撃を受けたようだった。
しかし、一番に目がいくのはおそらく腹部だろう。
何度も凶器を振り下ろしたのか、ズタズタになった内臓がのぞく。
屍と化した彼女の傍らには、ポニーテールの少年が立っていた。
「………」
彼は、ついさっきまで起きていたであろう惨劇に、何を思ったのか。
「今は、休んでいて」
そう言い見開いたままの目と思われる部分に優しく指をかける。

同時刻、家と柵の間に彼女はいた。
「…見つけましたわ」
双眼鏡を持つ短髪の少女は、家の中で過ごす眼鏡を掛けた少年を監視していた。
「うう…よくもあんないたいけな女の子をあんな目に…!最初見たとき吐きそうになってしまいましたのよ」
むすっとした様子で呟きながら、ひたすら監視を続ける。
やがて、少年はキッチンの方に歩いて行った。
「ふふふ、何処に行こうとも私の目からは逃れられませんわ!」
対象に気づかれないように、彼女も動き出した。
「あら」
移動しようとしたが、別の柵があるためできなかった。
「仕方ないですわ。ここで待ってればあの支配者気取りも戻ってきますわね」
支配者気取りとは対象のことらしい。少女のひしゃげた脳から読み取った情報を元に、彼女が勝手につけたものだ。
ほどなくして、対象が戻ってくる。
「!!!!」
対象の行動を見るやいなや監視を止め、庭の方へと駆けだした。

「ちょっと!聞いてくださいまし!!」
走りながら大声でポニーテールの少年に話しかける。
「静かに!対象に気付かれたらどうするんだよ」
小声で呼びかけに答える。幸い対象には気づかれてはいないようだ。
「で、どうしたの。何か変な行動でも?」
「そうですわ!あのあんちきしょう、澄ました顔でラーメンを食べ始めましたの!」
しょうもない報告と分かり、がっくりとうなだれる。
「お腹空いたんじゃないの。わざわざ食事を始めたくらいで仕事を放棄するなよ」
「だって!だってだってぇ…こんな……」
たまらず泣き出してしまう。半ば呆れながらも彼女の言葉を代弁してやる。
「つまりは理不尽だって、そう言いたいの?」
コクコクと頷く。しゃがんでいる彼に身体を預け、いよいよ本格的に泣き始める。涙がぽろぽろと零れる。

暫くの間二人はそうしていたが、少しして泣くのを止めた彼女は服の後ろポケットから携帯を取り出す。
泣き疲れていたからか、無言で彼に渡す。
相手は二人のリーダーで、内容は『こちらに戻れ』というものだった。
「戻って来いってさ」
「私も、もう…ここには居たくはありませんわ」
顔を真っ赤にして言った。彼女を気遣ってか、手を差し出してやる。
その手を掴んで危なげに立ち、少年は何か呪文らしきものを囁いた。
二人は白い光に包まれ、一瞬で消えた。

「あの…大丈夫ですか?」
不意に現れた二人のうち、短髪の少女は両手で顔を覆っている。
「何でもありませんわ…目にゴミが入っただけで」
時々鼻をすするような音がする。ベッドの上の少女は信じていないようだが、気持ちを察してかそれに関しては突っ込まない。
「ちょっとこの娘は涙脆いだけだから、気にしなくていいよ」
その言葉に反応し両手を顔から恐る恐る取り、発言者の顔を確認して反撃に出た。
このような光景に慣れたのか、しばらくの間ベッドから見守っていた。
「あ、そういえば聞きたいことが…」
思い出したように、リーダーらしき人物に話しかけた。
「あなたたちの事、なんて呼べば…?」
「ふむ…私たちには名前などないからな。とくに希望はないが……」
数十秒ほど考えこんでいたものの、なんとか喧嘩が収まったのを見計らって二人を呼びつけた。
「名前だって」
「困りましたわね…」
三人で考え込んでしまった。

一分は経っただろうか。短髪の少女が口を開く。
「それでは、私が命名して差し上げましょうかしら」
すっかりいつもの調子に戻った彼女は、得意げに話を続ける。
「まずは、あなたですわ!」
リーダーの少女を指さした。
「そうですわね…ええと、bright三世なんてどうかしら!」
「三世は必要ない」
三世はバッサリと否定した。だがbrightは許可したようだ。
「三世はただのジョークですわ。一人決定ですわね。続いて私の名前を!」
「やっぱりこれで決まりですわね。今後からroseとお呼びなさいませ!」
「君に薔薇は似合わないでしょ。たんぽぽぐらいで良いんじゃない?」
「な、なっ…!?私を愚弄するにもほどがありますわ!」
『愚弄って武士の人が使うような…』とベッドの上で思ったものの、そのまま見守った。
数分の言い合いの末、彼女の呼び名はviolet(すみれ)となった。
「ま、まあ仕方ないですわ。すみれも綺麗な花ですもの…」
ぶつぶつ言いながらも、一応は納得したらしい。少女がbrightの俯いた顔を覗くと、眠りに入っていることが確認できた。
「さーて、最後に…」
ポニーテールの少年に視線を向ける。不敵な笑みを浮かべながら。
「今までの屈辱の分、一番素晴らしい呼び名を付けて差し上げますわ」
「idiot…かっこいい響きじゃありませんこと?」
「却下で。」
ちなみにidiotとは英語で馬鹿という意味である。彼はそれを知っていたのか、またはそういうマイナスイメージの呼び名を提案することを読んでいたのか、即座に答えた。
「もう嫌な予感しかしないから自分で考えるよ。とりあえずcalmで」
「『穏やか』…良いと思いますわ。仕返し出来なかったのは残念ですけど」
「……全部英語ですか?詳しいですね」
「僕は…violetだっけ、彼女に合わせただけ。別に日本語とかでも良いと思うんだけど」
「私の母国はたぶん英語を使う所でしたからしっくりくるのですわ。そういえば、あなたは名前憶えているんでしょう?どう呼ばれていたんですの」
あまりに流暢な日本語の為、少女は彼女を外国人とは思えなかった。『憶えている』という言い方も不自然に感じたが、事情があるんだと自分を納得させ、少女は名前を名乗った。
「私は、神山栞です。兄には名前で呼ばれたことないですけど」
「…そんな奴が兄妹でしたの」
さっきまでの様子から一転、小声で呟いた。しかしすぐに明るい口調に戻り、嬉しそうに言った。
「それではこれからあなたの事は栞さんと呼ばせてもらいますわね。女の子らしい可愛い名前ですわ」
ふう、と溜息をついてからcalmが場をまとめるように話し始める。
「さ、みんなのニックネームも決まったところで本題に入ろうか」
この一言で急に場の空気が張りつめたように栞は感じた。
この三人のリーダーらしいbrightもいつのまにか目を覚ましている。
violetも珍しく真剣な面持ちになっている。
異常なほどの緊張感に縛られたこの一室で、『説明』が始まった。
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