鬼ごっこは一人の少女を豹変させる 2
 
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「スタート…した!」
 
(町中って事は…この学区内だよね)
(なら、むしろ学校に居れば)
(二人の裏をかける…)
 
「お見通しだよぅ?」
「!!」
「はい、交代っと♪」
 
「…!ああ…痛っ!」
「あたしらに勝とうなんて一兆年早いっての…」
 
 
 
「…可里奈ちゃん!交代!」
「ッ…」
「なーんて!リバース!!」
 
 
 
「由香ちゃん、大分走り回ってるみたいだね。どうしたの?」
「おばさん…こんにちは……」
「元気があるのは良いけど、無理しないでね!じゃあね」
「ありがとうございます…」
「…」
 
「もしもし、美紀ちゃん?」
「おばさん。由香見かけました?」
「ええ、さっき庭の手入れしてたらね、学校の方から」
「そうですか。その後どこに行きました?」
「あの大きいショッピングモールあるでしょ。あっちの方角に」
「ご協力、どうもです。お金は後でお届けしますから」
「お願いね、美紀ちゃん」
 
 
「はあ、はあ…」
「由香!」
「ほらほら、こっちだよ!」
「美紀ちゃん、可里奈ちゃん……?」
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ!」
「はあ…ううっ…」
「もうギブ?良いのかなー負けちゃって」
「はあっ…」
 
「…」
「ねえ…」
「何?」
「ここは一つ、無力さを思い知らせてやらない?」
「…面白そうね…」
 
「由香っ…こーたいしていいよ!」
「え…?」
「ほらあ、ここに手つけて!」
「…」
「どうして…?」
「ハンデだよ。由香はこのあと逃げるだけなんだから。喜びなって!」
「じゃ、頑張ってねー」
 
 
『けらけら…』
 
『くすくす……』
 
 
「いらっしゃいませー」
「ふう……」
「…大丈夫ですか、お客様?」
「はあはあ、大丈夫です…けほっ!」
「しばらく、ここで休んでいかれては?」
「…え?」
「とてもお疲れのようですし。向こうの在庫置き場でよろしければ」
「良いんですか!?」
「どうぞどうぞ。お友達にも見つかりづらいでしょうから」
「あ、ありがとうございます…!」
 
「美紀さんの言うとおり、あいつすげー馬鹿だね。初対面の奴にそこまでするかよ」
「よく気付かなかったね。お友達に〜の所で。本来うちの店員が知るわけないのにさ」
「やっぱり、虐められてるからだよ。親切にしてくれるだけでも嬉しいーってか」
「ははは…」
 
「良かった…ここで明日までじっとしてれば」
「はい、クリアっと」
「…」
「え」
「ははは!あんたは本当に調子の良いやつだよね。由香なんかに優しくしてくれる奴なんているわけないのに」
「私達も…いや、町中みーんなグルって事。勝ち目なんて無いんだよ」
「だからあ…お家で明日の昼までゆっくり休んでてよ、負け確定になるまでさ」
 
「「「「あははははは………」」」」
 
「     」
「…      ! 」
「   は       はは    …    !! !」
 
 
『ははは…、…?』
 
 
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