Resident in alternate world 3

窓から空を見ながら、女の人にもらったジュースを少しずつ飲む。


時折外から吹く弱い風が心地良い。
身体のあちこちがちくちく痛む気がするけど、これくらいどうってこと無い。
少しでも気を強く持たないと、すぐにでも挫けてしまいそうだから。

そうだ、あの女の人の名前をあとで聞いておこう。
あの人の投げやりだけど優しい気遣いで、挫けずにいられたから。

そう考えていた頃だった。



こんこん。


薄い鉄板のドアを、優しくロックしてきた。

続いて、
「学生さん、学生さん」
という声が聞こえる。

あの人が呼んでくれた人だろうか。
誰かに似てる声だ。
呼び方に違和感を感じたものの、ジュースを机に置き、そっと扉を開ける。

やっぱり気のせいじゃなかった。

「お兄ちゃん」


「えっ」





「ものすごく似てたんです。すみません」

ぐるぐるぐる

「別に、気にしてませんから」

ぐるぐる

「なら良いんですけど」

ぐる…

「「……」」


手当てしに来てくれた青年は、包帯をひたすら私の肌に巻きつける。
彼いわく、これを巻いておけばどんな怪我にも効くらしい。
多分、今すごく顔が赤くなってるんだろうな、私。

ごめんなさい。本当にごめんなさい。
でもあまりにも似てたんです。
一年しか歳が違わないのに長身な所とか、謙虚な態度とか、私よりずっと大人っぽいのとか。
お兄ちゃんに。
ドッペルゲンガー並に似てるんです。

とにかく顔が赤いのを隠す為、下を向いてスカートを見ているしかない。
多分バレてるけど、顔を上げてもどこを見てればいいのか分からない。
…?
足を見てみる。包帯が迫ってきていた。

巻き終わったら何か話をするんだろうか。
間が持つのか不安だ。
こんなに人見知りだったっけ……


「終わりました」

「えっ?あ、はい。ありがとうございます」
声が裏返った。

「一日放っておけば綺麗に治ると思います」

「分かりました」

「…それと、昼の間は構いませんが、夜は窓を閉めておいてください」

「はい」

「では、他に何か質問とかありますか?」

「いえ。大丈夫です」

「そうですか、それでは僕は部屋に戻ります」

「ど、どうもありがとうございました…」








青年が出て行った後。

「あっ」
状況を聞いておけば良かったと後悔している私は馬鹿です。
見た目がそっくりなだけでどうして意識するんだ。

「痛い痛い!!離せ!!!」

なんて声が通路あたりから聞こえた。
さっきと同じように扉を開け、様子を伺う。

「帰ってきやがったなこのクソガキが!もう人を連れ帰ってくるなって散々言ったろうが!!」

「だからってグーで殴って両耳を掴んで投げる事はないだろー!!」


助けてくれた少年と、女の人が口論(というか喧嘩?)していた。

彼らを見ていると、少年が私の視線に気付いたようだった。
「あ、さっきの女の子じゃん。無事そうでよかっ」

言い終わる前に、少年は女の人のパンチを受けた。



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